ある事件の発生後

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「いまのところわかっている状況は?」  俺が質問すると、風間は頷いた。 「被害者はまず剣崎さんのいるその玄関で被害者は切り付けられたようです」  風間の指さす足元をオレはもう一度見る。  線上に血痕が続いている。切りつけられて飛び散った血というところか。 「犯人であろう訪問者に切りつけられたもののその時点では軽傷だったのか、被害者は廊下へ逃げ込んだと思われます。そのときに転んだのか、犯人に押し倒されたのかはわかりませんが」  風間は自分の足元の血の染みを指差す。 「ここで、まず背中を刺されたのかと思います。数か所刺されたうちの一つが背中側から心臓に達していました。これが致命傷となったようです」 「ひどい話だ。まだ若い娘さんを」 「心臓以外にも数か所を滅多刺しですね。背中だけで飽き足らず顔にまで傷がありました」  ただの物盗りならば、顔まで切る必要はないだろう。  とするならば、これは被害者女性への怨恨かもしれない。もちろん犯人が怨恨に見せかけるための物盗りの可能性も否定はできない。 「怨恨と物盗りの両方で調べてます」  俺と同じことを風間は考えていたらしい。 「第一発見者である男、彼はこの部屋を借りている大学生ですが、現在、署で事情聴取中です」 「借り主ね……。被害者とその男は恋愛関係ってやつだったのか?」 「おそらく」 「そうなると、その男も怪しくなってくるな。どっちかが浮気したとか、男女のもつれとか。男が別れたくなくて物盗りに見せてやった……三文小説みたいな話もありえるな」 「そうですね。僕としてはその可能性が高いと思っています」  風間の考えを否定する材料はない。  もう少し風間の持つ情報を聞いてみるしかないと思い、俺は「続けてくれ」と言った。
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