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私はここが好き。
もちろん本が好きだからだけど、本好きの人が集まって静かに読んだり、時に知りあい同士が本談義を交わしたり…そんな雰囲気が好きなんです。
それに見た目と本の趣味が合ってなくて、意外な人が意外な本を読み耽っているのを見たり、そういった人間観察をするのも楽しかったりして。
そんな私が最近気になっている人がいるんです。
もし、雨が降りだしたら、来るかもしれません……。
私が掃除を終えて、今月のマスターお薦め本コーナーの展示をしていると外の舗道にポツリ、ポツリと雨粒が落ちてきた。
「あ、雨だ……。あの二人、来るのかな」
私が外に目をやると、瞬く間に雨音は激しくなり、自由落下した雨粒は容赦なく降り注いで、舗道の色を変えていく。
激しい雨音を聞いて、マスターもいつの間にか私の横で外を眺めていた。
「あー、やっぱり降ってきたね」マスターがちょっと怨めしげに雨色に染まった外を眺めて呟いた。
「……ですね。すごい雨……。マスターって雨好きですか?」私の他愛もない質問にマスターは僅かに眉を上げて見せる。
「本が濡れるからなぁ。好きじゃないよ。風景としてはいいけどね。雨の降る日に静かに本を読む、悪くはないよな」
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