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4
私は疼くような足の痛みで目が覚めた。
病院のベッドだ。
身体を動かそうとすると左腕と左肩に痛みが走った。
側には母が居眠りをしていた。
「おかあちゃん...」
呼んでみたが、声があまり出なかった。
再度、お腹に力を入れて呼んだ。
「おかあちゃんてば...」
「あぁヒーちゃん、起きたね。痛かトコはなかね?」
「うん...ごめん、心配ばけてしもうた。」
「みんな、たいぎゃな たまがった ばってん、
あたが ぶじで なによりたい。
たすけてもろうた人には わるかこつ したばってんね。」
私はあの降りしきる雨の中の出来事を思い出していた。
夢ではないけど道路に横たわった良ちゃんと私。
そしてそれを見ながら会話した良ちゃんと私。
「助けてくれた男の人は どぎゃん なったと?」
「ふぅ、あぁ... あん人は 亡くならしたたい...
ほとんど即死...だったげにゃ...かわいそうなこったい。
あんたの 知り合いだったてね...
人ば助けて 自分が死ぬるとは 仏さんのごたる。」
私は右足を骨折して左腕にヒビが入っていた。
良ちゃんが流した血に比べたら何て事ないのだけれども、折れてしまった生きる気力はもう元に戻らない気がした。
両親や兄は帰郷するように強く勧めたが、私は決めかねていた。
どこにいても良ちゃんの事は離れないし、このままこの街を出ていくのも何か違うような気がしていた。
事故が起きた時の事も詳しく聞くことが出来た。
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