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多くの目撃者がいた事故の原因はドライバーの前方不注意だった。
陽菜が歩き出した時、スピードを緩めない車に何人かは気付いたが彼女は気持ちが競っていたのもあるが踏み出してしまった。
その時、後ろの方から男性が飛び出して彼女を抱きかかえてかわそうとしたようだったが生憎、逃げた方へ車が逸れたためマトモに激突した。
男は彼女を守るかのように抱きしめ車に背を向けた。
そして後頭部をフロントガラスに強打して飛ばされた。
しかしそれだけではなかった。
道路に叩きつけられた時も自分の体を反転させて彼女を守った。
結局アスファルトにも後頭部を打ち付け頭が割れ脳漿も溢れた。
ほぼ即死だったはずだが、抱きしめた彼女を離さなかった。
それにもう1つ不可思議な事が目撃された。
事故直後、頭部から吹き出す血液が雨水に混ざり広がって行く時、逆流が起こっていたらしかった。つまり横たわる彼の頭部に向かって血液が戻る様な現象だった。
さらに何事か話す男女の会話を聞いた人までいた。
陽菜はその話を黙って聞いていた。
あの時 良ちゃんと自分が体験したままの事だったから...
忘れる筈ない。
でも会話を思い出せなかった。
ニコニコとした良ちゃんの顔が眩しくて...
愛しい思いが溢れていてから...
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