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3ヶ月の入院中でリハビリも順調に進み退院した。 身体は少しずつ回復したが夜になると涙が溢れた。 特に雨の夜は一晩中、嗚咽して泣き明かした。 母親はこの状態では娘1人に出来ないと思い実家に連れ帰ろうと思っていた。 退院しても陽菜の生活は暗いトンネルを歩いているような日々が続いた。 それでも会社をやめる事なく勤めていたが良の命日が近づいていた。 母親は暫くの間 一緒に生活してくれたが実家の事もあるので帰って行った。 良の事になるとすぐ泣きべそをかくようになっていたし、会社で良の関係者に会う事が恐ろしくて自分でもどうしていいのか分からなかった。 それでも陽菜は勇気を出して良の同僚に会いに行った。 良の実家は長野の松本だという事は知っていたが詳しい連絡先を教えてくれないか頼んでみた。 その同僚は快く教えてくれて良の1周忌は命日の1週間前の日曜に行われる事も教えてくれた。 思い切って良の実家に連絡すると命日の午前10時に松本駅の改札で待ち合せてくれる事になった。応対してくれた良のお父さんはわだかまりなく潔い言葉で話してくれてちょっとだけ安心した。 当日... 新宿 朝7時発のあずさに乗った。 八王子を過ぎると次第に懐かしい風景が現れ所々で自分が育った村に似た場所を見つける事が出来た。 不思議と気持ちが落ち着いて来て良ちゃんを身近に感じた。 そして知らない内に涙が溢れていた。 松本駅の改札を出るとすぐに分かった。 目元が良ちゃんにそっくりなお母さん。 泣くのを我慢した...
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