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そうして、無事にカメラマンを取り押さえた俺は追ってきた志麻とやっと再会を果たす。
久しぶり、なんて、やけに緊張して気の利いた言葉も出てこない自分に苦笑いを浮かべれば、志麻は目の前で瞳を弱々しく滲ませる。
焦る俺に、3年前自分のせいで傷つけたと呟いた志麻があまりにか細く見えた。
____そんなの、こっちの台詞だ。
刹那的に、目の前の彼女に触れたくなる衝動を抑えるのに必死だった。
◻︎
葉子さんの車で神原社長の家にたどり着いてすぐ、社長はにこやかに志麻に質問を投げる。
瞳に強い光を宿して、
「3年前、翠は、
___ただの、"私の好きな人"でした。」
彼女はそう言い切った。
3年前の志麻との時間が、自分の頭の中を駆け巡る。
がんじがらめに思惑が蔓延るこの世界で、俺の気持ちはたった1つ、ずっと変わらなかった。
だけど、同じ思いを持っていた筈の彼女は、それを過去の話として置いていこうとする。
決別を伝える志麻の手を思わず握った。
そんなこと、許すわけがない。
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