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この3年間の事の顛末を、築島さんとの会話も含めて話せば、明らかに動揺しながらも志麻はゆっくりと事態を飲み込もうとしていた。
そして、全てを打ち明け終えると、俺に向かって謝り、眉を下げて「自分はやはり何もできなかった」と俯く。
馬鹿。
何もできない奴のために、何でみんなが動くんだよ。
叱るような口調でそう言えば、少しずつ、志麻の表情が解れていく。
____あの頃言えなかったことを、俺は漸く言える。
「志麻、俺の前では仮面は要らない。」
3年前、辛さを隠して強くあろうとする志麻に言ってあげられなかった言葉だ。
傍で守ることもできないのに、無責任なことは言えないと、手離して歯痒さを噛み殺すことしかできない自分に苛立った。
でも、今は違う。
俺が、いくらだって受け止めるから。
祈るように志麻に視線をやると、彼女は、潤んだ瞳から大粒の涙をぽたり、ぽたりと溢した。
それを境に次から次へと溢れる涙を指で拭ってやる。
「……やっと、俺の前で泣いた。」
自分が想像した以上にホッとした声色でそう言うと
「ばか、」
泣きながらも、彼女が心から微笑んだのを見て俺は
もう我慢をしなかった。
志麻を引き寄せて自身の腕の中におさめると、3年前と何も変わらない温もりに、俺まで涙が出そうだった。
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