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翠と再会してから間もなく、葉子さんが書き下ろした映画の台本が届いた。
一気に読み進めた私は、自分が演じる立場だということも忘れて、1読者として作品の世界に浸ってしまった。
撮影はまだ先だが、この作品に関わる事ができる喜びを噛み締める。
今日は、全く違う仕事が入っていて楽屋で待機している状態だが、嬉しくて台本を家から持ってきてしまったなんて恥ずかしくて誰にも言えない。
そろそろ着替えようか、なんて思っていた時、
____コンコンコン、
軽快なリズムで鳴らされる楽屋のドア。
私は嫌というほどに、この音を知っている。
「来ちゃった。」
ドアを開ければ、長身で、全身に綺麗を携えた細身の男が小首を傾げ、ヘラリと笑って立っていて、私は大袈裟に溜息を吐いた。
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