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葉子さんの台本見た?なんて、嬉しそうに笑いながら私に問いかける翠は、完全にもう演者のスイッチが入っている。
「今日の仕事は取材なんだけど、思わず台本持ってきた。」
そう言って笑う翠に、おずおずと自分の鞄から同じ台本を取り出すと、一瞬面食らったような顔をした翠は、流石だなあと微笑んだ。
◻︎
「台本の読み合わせしよう」
なんて、奴の急な誘いを断ることもできず、私は翠が座っているソファの隣に腰掛ける。
台本をパラパラ開きながら、
「そうだ。23頁のさ、このシーン、格好良くない?
これ俺と志麻でやるんだよ。楽しみすぎて禿げそう。」
横顔でも嬉しさが伝わるくらい笑顔の翠を見つめていると、なんだか、私の胸はじわじわと込み上げてくるものがあって。
___あ、なんか、やばいかもしれない。
そう思った時には、既に鼻の奥にツンとくる痛み。
滲む視界に焦って、私は開いていた台本で咄嗟に顔を隠した。
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