1355人が本棚に入れています
本棚に追加
/154ページ
「で、読み合わせするの?しないの?」
楽しそうにそう問いかける翠に、少しム、としながら、勿論するに決まってると、奴の近くにある台本に手を伸ばした。
と、その瞬間。
「、」
腕を急に引かれた私は、勢いよく目の前の男の胸に飛び込む形になる。
「ちょっと…!」
危ないでしょ、と、揶揄してやろうと勢いよく顔を上げた瞬間。
後頭部にいつのまにか回っていた手に顔を固定されて、唇を塞がれた。
「っ、」
一瞬の出来事に思考までも奪われた私が次に気がついた時には、至近距離で挑発的に口角を上げる翠の顔があった。
「そっちから距離つめてきておいて、それは離さないでしょ。」
また、いつぞやのセリフを使って微笑む男。
心拍数、測ってやろうかな。
「……キスシーンは、無かった筈ですが。」
精一杯の虚勢でそう零す私に、耐えきれないと言わんばかりに笑った翠は「職業病はどっちだよ。」と楽しそうに言った。
きっと私の照れ隠しだって分かっているくせに、「もう少し練習しますか?」なんて返してくるこの男には、一生敵わない気がしている。
だから、キスシーン無いってば。
【後日談01】
職業病には、ご注意を
恐らく双方、重症です。
fin.
最初のコメントを投稿しよう!