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「……國立さん。」
「……………はい。」
「國立さん、惚気たと思った次の瞬間にはそんなに凹まれたらこっちもなんていえば良いのか分からないんだけど。」
「…死にたいです。」
田端さんは、壁の方を向いて膝を抱えて縮こまる私にクスクスと笑う。
「…本当に意図せずに出たって感じだったね。」
「掘り返さないでください、死にます。」
弱々しい声でそう言う私は、なんならぐーすかと寝ているこの男より絶対顔が赤い。
こいつ許さないぞと、私は見当違いに八つ当たりしたくなった。
「さて、珍しいものも見れたので俺は帰るかな。」
「あ、はい。ありがとうございました。」
日々、翠の相手は疲れるでしょうと田端さんの背中に労いの言葉を心の中でかける。
玄関先まで見送った私に、ドアノブに手をかけた田端さんが振り返る。
「…國立さん。こんな夜遅くに巻き込んだお詫びに1つ。
あいつ、お酒別に弱くないよ。」
「……え?」
「…緊張して、お酒の力借りようとして配分間違えただけ。つまりアホだな。」
「…緊張…?」
打ち上げなのに?
何かあったのかと問いかけるも、それは本人に聞いてみてと、さわやかな笑顔を残して田端さんは去って行った。
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