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「お忙しい中、スイと、國立 志麻の結婚発表の記者会見にお集まりいただき、ありがとうございます。
本日は、どうぞよろしくお願いします。」
俺がマイクを通してそう伝えた瞬間、大量のシャッター音と眩しいフラッシュが視界いっぱいに広がって自然と目を細める。
隣の志麻が、詰めかけた記者の数に少し圧倒されて身体を退けぞらせているのがわかって、漏れそうな笑みをぐっと我慢した。
"応援してくれる方には、きちんと報告をしたい。"
その気持ちでなんとか会見を決意した彼女は、中継されるということを、とにかく嫌がっていた。
本当にギリギリ直前まで
"…本当にやる?雨天は中止?
みんなそんなに興味は無いと思うんだよね。"
と聞いてきた。雨天決行だよ遠足か。
18時スタートの会見は、都内有数の高級ホテルにて行われた。
用意された会場の大きさから、もう少し察してもいいと思うけど、全く、俺の奥さんは本当に仕事に邁進し過ぎて、自分の立ち位置がイマイチ分かっていないらしい。
今やドラマ、映画に引っ張りだこの志麻は、生放送の番組に登場したことは殆ど無い。(数分の番宣出演では、いつもの仮面を貼り付けて明るい笑顔でなんとかこなしている。本人は割と必死。)
そんな國立 志麻の、突然の結婚報道に、記者会見。
話題にならないわけがないし、もはや俺より注目されてるって。
隣の志麻は、一緒にお辞儀しながら
「かえりたい…」
と俺にだけ聞こえるか細い声で伝えてきて思わず笑ってしまった。
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