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記者達が好奇心と期待の入り混じった視線で、志麻の反応を待つ。
数秒間、隣の志麻は動くこともせず、じ、と前を見つめていた。
何か俺がフォローすべきか、そう思いマイクを手にしようとした瞬間だった。
「良いですよ、お教えします。」
静寂に、彼女の澄み通った声が響く。
「______追いかけて、追いかけて、追いかける。
以上です。」
「、」
「良い作戦でしょう?」
なんて、悪戯が成功したかのようにあどけない、まるでミハネを思わせるかのような愛嬌たっぷりの笑顔で、志麻はそう言った。
目の前の記者達が、その笑顔に惚けたような気の抜けた顔になる。何見惚れてんだよ。
質問をした記者も同じように間抜け面だったが、はっと我にかえり、焦った声色で志麻へ言葉をかけた。
「そ、それはつまり、やはり志麻さんがアプローチをし続けたということですか…!」
「私、この人が見てる世界を見てみたかったんです。
隣に、並んでみたかった。
だからずっと追いかけました。それだけです。
アプローチなんて素敵なことは出来てませんでしたけど、私が、ずっと好きだった。
それは何も間違いでは無いですよ。」
そう言って、やはりふわりと笑う志麻の横顔はとても綺麗で。
記者からの煽りを、受け流すでも誤魔化すでもなく、
"私が、ずっと好きだった"
なんて、堂々と認める彼女に、俺の胸はチリチリと焦れて今すぐここで、触れたくなってしまった。
好き勝手に言われる部分もある、そうマネージャーの2人は忠告してくれた。
キレるなよって俺のことばっかり心配してたけど、もう充分、俺の奥さんもこれはある意味キレてると思うんだけど、その辺りはどうしてくれんの。
悪いけど、俺ももう我慢しない。
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