【後日談4】

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抵抗する暇もなく外へ出た私は、そのまま駐車場へと連行された。 「…何これ。」 「車。」 それは見たら分かるわ、と怪訝そうに目をやるのに翠は愉快に笑う。 「レンタカー借りて来ちゃった。」 ふざけた口調でも様になってしまう彫刻のような顔立ちの男に私は溜息を漏らす。 こいつ、もう最初から行く気満々だったんじゃないか。 観念して、助手席に座ってシートベルトを締めていると、隣から視線を感じて私は動作を止める。 「…なに?」 「別に?楽しいなって思っただけ。」 エンジンをかけながら、唇に笑みを乗せる男がそう呟く。 「まだ何もしてないじゃん。」 思わず笑ってしまった私に、翠も笑う。 「何も気にせず、志麻と出かけられる。 もうそんなん、それだけで楽しいでしょ?」 小首を傾げてこちらに問いかける男は、私の気持ちが同じの筈だって自信も携えていてちょっと悔しい。 そんなの、私だって思ってるに決まってる。
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