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「はあ?無理。」
「ねえ、なんでよ!?」
「こわ、逆ギレなんだけど。」
やだやだ、なんて言いながら待機中のパイプ椅子にふんぞり返って台本を眺めるのは連ドラで共演中の穂積 昴という男だ。
仕事仲間がこうして相談しているというのにこいつはなんて思いやりに欠ける男なのか?
じと、と睨むとその視線に気づいたのか切れ長の瞳でこちらを見返してきた。
そして嘆息を漏らして、
「直接聞けばいいだろ。」
と言い放ちやがった。
「だから、それをしたく無いからあんたみたいなやつに泣く泣く頼んでるんでしょ?」
「本音漏れすぎだろ。余計気持ち失せるわ。」
「あーごめんごめん、拗ねないで。」
「ふざけんな。」
ち、と舌打ちをかますこの男は、世間では甘いマスクで女子を虜にしていると有名だ。世の中何かがおかしい。
「2人ほんと仲良しだねー」
なんて、スタッフがこちらを見ながら通り過ぎると、先程までのふざけた座り方をいつの間に正したのか、綺麗な姿勢と爽やかな笑顔で「あはは、お陰様で。」と返事をしていて、冷めた目を向けるしか無かった。なんて奴だ。
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