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「離して。早くお風呂入って寝ろ。」
「もうちょっと夫婦の語らいが必要じゃない？」
「本日はもう終了しました。」
「…夜間も営業してるって聞いてます。」
「言ったことないわ。」
ぐぐ、と首に回る男の腕に力がこもる。
こいつ、このど深夜に元気すぎないか。
「…これ、ヘッドフォン？」
「……そう。」
1週間出来る限り観察したけれど、この男の欲しいものは全く分からなくて。
だけど出かける時とか、家でリラックスしてる時とか、翠は音楽をよく聴いてるなあというのは分かった。
所属するナインズプロダクションにはアーティストも多いし、仲の良い人も結構居るらしい。
いつもはBluetoothの小さなイヤホンを使っている翠だけど、なんとなく、色んなお店を半泣きになりながら徘徊してる時にこの少し大きめのヘッドフォンを見かけて。
シックな黒色で、ロゴが上品なゴールド。
「翠っぽいな。」
そう思ったら、もうそれしか見えなくなって、いつのまにか買ってしまっていた。
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