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「あと、昴からも聞いてたから。"あの女めっちゃ悩んでて笑いますよ"って。」
…あの男、本当に殺る。
険しい顔つきになった私に、翠は笑う。
「志麻、サプライズとか苦手なのになんでこんないろいろ考えてくれたの?」
尋ねる声は甘く、私の髪を優しく撫でるその男から目が離せない。
私は、おめでとうを言葉にするのも、プレゼント1つ買うのもままならないような、どうしようも無い人間だけど。
「…この間のデート、嬉しかったから、」
仕事の悩みを抱えていた私を簡単に連れ出してくれたあの手が、とても大事だと充分すぎるくらいに知ったから。
「ちょっとくらい私も翠を喜ばせてみたくて、だから、」
「はい可愛いです。」
そう言った瞬間、なんのスイッチが入ったのか翠がぐい、と後頭部に手を回して荒々しく口づけしてくるからびっくりして身体が強張る。
最後に軽いリップノイズで離された熱は、今度は男の瞳の中に宿っていた。
「…続きは、後で聞かせて。」
「………おやすみ。」
「寝かせるかよ。」
くしゃり私の髪を乱した男は、笑ってお風呂場へと向かった。
絶対、寝てやる。
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