「期待は裏切るから、注目されるのよ?」

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「期待は裏切るから、注目されるのよ?」

”魔が差した” 私は、そんな物騒かつぶっとばされそうな理由でこの世界に飛び込んだ。 だけどこれ以外、理由づけの仕様がない。 街を歩いていて、前をゆくスーツの女の人が電話しながらガサゴソと器用にかばんを漁っているのを見つけたそのタイミングで、パスケースが落ちるのを目撃。 落としましたよ、と至極当然の内容を持って話しかけた私を見て彼女は数秒の沈黙。 そして急に私の手を握ったかと思えば、 「芸能界に、入ってみましょうか。」 クリクリの瞳をこれでもかというくらい輝かせ、そう言葉を投げたのだった。 まだ高校の制服が着慣れない頃だった私は、「あ、はい」なんて、電話の相手は大丈夫なのかという思案をめぐらせながら、ちょっとコンビニ行こうぜくらいのノリに返答をしていた。 それが今現在、うちのリビングから、寝室のドア越しに大きすぎる声で急かしてきているマネージャーの築島(ツキシマ) (カオル)である。 香は、とにかく強引だった。 毎日、重めの恋人か?という頻度で連絡が来ては、その度に「不安な部分は全て解消するから、何かあればすぐに聞いてほしい。」と私に伝えてくれた。 私の不器用かつ短い質問にも光の速さで返事をくれる香に、自分がどんどん絆されている感覚は間違いではなくて。 この人に、自分を任せてみたい、だなんて思ってしまったのだ。 高校までの浅い経験の中でも、香との出会いはきっと特別だと感じていた。
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