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「志麻。
俺は、3年前それなりの覚悟を持って志麻の手を離した。
だから、ここからはもう2度と離せないし離すつもりも無い。」
嗚呼、この男は、本当にずるい。
「志麻、俺の前では仮面は要らない。」
「っ、」
ぽたぽたと、我慢できなくなった涙が頬を伝った。
それを親指ではらって、腕を引いて私を抱きしめた翠は
「…あの過去形、修正してよ。」
「?」
「好きな人"だった"じゃないだろ。」
"3年前も、今も。
___ただの、私の好きな人、でした。"
あまりに不服そうな声でそうぼやく。
すぐ傍で聞こえる速い心拍数に笑って、私は翠の首に腕を回した。
包まれた翠の香りが、3年前と何も変わってないことにまた涙が出てきて。
私、ここに戻ってきたかった。
だいすき、と聞こえるか聞こえないかくらいの声で呟くと、ふ、と小さく息を吐いて笑う翠の気配が伝わった。
そうして、私を抱きしめる腕の力を最大限に強くした。
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