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「早く言いたかったのに、映画の公開が終わるまでって志麻が言うから了承したんだけど?」
少し不満そうにそう言う翠。
「当たり前でしょ。
観てくれる人に変な前情報入れたくない。」
「…真面目だねえ。」
ニヤニヤと嬉しそうに笑う翠は、グレーのダブルチェックのスーツを難なく着こなしていて、よりスタイルの良さが際立っている。
「なに、見惚れたの。」
「うん。」
「っ、」
自分で聞いたくせに肯定したら戸惑いを見せる翠に今度は私が笑う。
「…会見で覚えてろよ。」
「変なこと言わないでよ、香に殺される。」
「いいよ、比佐に宥めてもらう」
「田端さん疲労で死んじゃうから。」
そろそろ、うちのマネージャーにも素直になってほしいところだ。
「さて。じゃあそろそろ行きますか、"奥さん"。」
私は笑って、翠の手を取った。
◻︎◼︎
そうしてフタリは今日も、
仮面舞踏会へとくり出すのだ。
お互いの左手薬指に、同じ指輪が光っていた。
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