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「まあでもあたしの七光でなんとかしようとしてない姿勢は褒めてあげるわ。
まずそんなこと考えてたら絞めるけどね。」
なんて物騒な叔母だ、と俺は苦笑いする。
「……翠、やってみなさい。
失敗したらとか言って今の場所に甘んじてるうちは、ただの格好悪いポンコツよあんた。
モデルっていう仕事に対しても失礼だわ。」
「酷いな。」
ズケズケとストレートに刺してくる彼女だが、言い返せないのはいつも正論だからだ。
俳優として、挑戦してみたい。
だけど素直に、ただ怖かった。
「それに。苦労して這い上がってきた人間の泥臭い演技が私は好きだけどね。
そういうのを自分の自信に変えて、色んな仮面を扱える人と仕事がしたいわね。」
…それ、今からその道を辿れって言ってるよな。
挑発的に笑う彼女を一瞥すると、首を少し傾けて綺麗に笑う。
でも、胸の内の蟠りのようなものは、す、と急に消えていった。
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