1355人が本棚に入れています
本棚に追加
/154ページ
比佐が、辿り着いたドアの前で永遠に躊躇っているのを後ろから見ていた俺は、こんなん日が暮れるわと、代わりに軽快にノックしてやった。
お前…と小さく呟く比佐に早く挨拶しろ、と目で訴える。
「すいません、今日隣のスタジオで撮影してる者なんですが、せっかくなので挨拶にきました。」
すると、中では一瞬ガタリ、大きな音がした。
俺と比佐はお互い顔を見合わせたが、そのタイミングでドアが開かれる。
恐る恐る、そんな表現がぴったりのゆっくりとしたスピードで開いたドアの先には、予告映像で何度も観ていたミハネ、
______とは、随分雰囲気の違う女が立っていた。
鎖骨辺りまで伸びた黒髪が、傷みを知らない艶を帯びてさらりと揺れる。
涼しい切れ長の目元も、線の真っすぐな鼻梁も、「綺麗」がしっくりくる、そんな印象だった。
なんか、思ってたのと違うな。
それに、俺との身長差は勿論あるにしても、
「え?思ったよりデカイね」
「は?」
あ、やばい、思ったことがそのまま口に出た。
何言ってんだ!と怒る比佐を適当に流しながら、再び目の前の女を見ると、向こうも「やばい」とあからさまに顔に書いてある気まずい表情を浮かべていた。
そういえば今こいつ、「は?」って言ったな。
最初のコメントを投稿しよう!