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俄然、興味の湧いた俺は、自分の本名を名乗る。
隣の比佐が驚いたような表情になっているのが見なくても分かった。
更に顔に訝しさを色濃く乗せる彼女に今度は、服装のことに触れつつ少し煽る。
すると。
「スイさんが仰るように、私、”少し人より大きく”育ってますんで、こういう服の方が似合うんですよね。
でも、私、”天真爛漫”なんで、映画では身長が際立たないようなマキシ丈のワンピースとかローヒール使って可愛い服装いろいろしてますよかったらそこも注目してくださいね」
ポカンとした比佐の表情にも笑えたけど、俺は何より目の前の女の正体にどこか高揚感を持っている自分に気が付いて、喉奥でク、と笑った。
"…まあ、志麻に会ったらあんたも分かるわよ。"
葉子さんの言葉を思い出す。
ごめん、葉子さん。
前言撤回だろ、こんなの。
「これからよろしくね、志麻。」
どこが、天真爛漫なんだよ。
挨拶を心から嫌そうな顔で断ってくる志麻に、また笑えた。
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