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prologue
「華々しい暮らし」を想像しているであろう国民の皆様に、声を大にして否定をお伝えしたい日常が私にはある。
「志麻!!!着替え終わった!?」
「ちょっと待って…急に撮影時間の変更とか聞いてない……まだパンツだよ…」
ドア越しに聞こえる声に、私は覇気なくそう応える。
「しょうがないでしょ!明日からずっと天気悪いみたいだから内容的に今日早めスタートでやっちゃっていいですか?って言われたら断れないじゃない。」
「そりゃそうだけどー…」
早くしなさいとドンドン扉を叩いて急かす音を背中で聞きながら、寝癖もままならない髪をぐしゃりほぐしてため息をついた。
"國立 志麻。
24歳、等身大の演技力で魅せる”
ベッド脇に乱雑に積まれた雑誌の1番上の表紙には、見慣れた自分の顔と、そんなタイトルが大きく添えられていた。
「この時の衣装、可愛かったな。」
やはり買い取っておけばよかった。
今度スタイリストさんに聞いておこうという思考に至った瞬間。
「志麻!?あんた早くして!?」
聞き慣れた声がドア越しに再びとんできて、これはそろそろ本腰入れて用意しないと後が怖いと、苦笑いを零した。
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