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「あの、聞いてもいいですか?」
みさをの狙い通り、甘い物を食べて気持ちがほぐれたのか、由愛の方から話しかけてきた。
「うん」
「萩野さんは……」
「みさをでいいよ」
「みさを……さんは阿倍野先輩とどういう関係なんですか?もしかして……恋人とか?」
由愛は訝しむような目つきをしている。
「ううん、ただの同居人だよ。えーっと、今流行りのルームシェアってやつ。ほら、この部屋独りで住むには広すぎるでしょう?」
「そうなんですね。良かったー」
由愛は嬉しそうに言って、グーにした両手を口に近づけた。まるでアイドルのような仕草にみさをは苦笑する。
でもあっさり納得してくれて良かった。どこで知り合ったのかなど追及されたら困る、とほっとしていたのも束の間ーー。
「私、阿倍野先輩が好きなんです!!」
由愛が次に放った言葉に驚いて、椅子からずり落ちそうになった。
なぜ唐突に告白を? イマドキの子の会話ってこうなの?
「そ、そう」
キキの個人的事情にはあまり踏み込まない方がいい気がするが、由愛の口を塞ぐわけにもいかず、とりあえず相槌を打った。
考えたら、今までキキと恋愛の話はしたことがなかった。お互いにわざと避けているようなふしもある。といっても、みさをの方は取り立てて話すような経験もないのだが、百戦錬磨に見えるキキにはいろいろあるだろうとは思っていた。
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