第五章 マシュマロの破壊力

4/21
前へ
/239ページ
次へ
「あれ?」  エレベーターを降りると誰もいなかった。  きょろきょろしていると、「あの……」と声が聞こえた。  女の子は集合ポストの脇に隠れていたらしい、白いモコモコがそろりと顔を出す。 「大丈夫? 男の人はまだいるの?」 「分かりません、怖くて確認できなくて」  女の子はふるふると首を振った。 「そうだよね。ここで待ってて、私が外を見てくるから」  みさをはエントランスを出て周辺をぐるっと見回したが、人影は見えなかった。 「今は誰もいないみたいだけど……」 「そうですか。すいません」  みさをが報告すると、女の子は消え入りそうな声で謝って頭を下げた。  そう言われてもすぐに出ていくのは怖いのだろう。女の子はどうしようか逡巡している様子。 「あなたはキキ……じゃなくって、阿倍野くんの友達なんだよね?」 「友達というか、大学の後輩なんです」  みさをとしても、キキの知り合いをこのまま帰して何かあったら困る。 「とりあえずうちに上がって待ってなよ。もうすぐ阿倍野くんも帰ってくると思うし」と提案した。 「でも……。いいんですか? ご迷惑じゃ……」 「いいよ、いいよ。困った時はお互い様、って言うでしょ」  若い女の子への接し方が分からず、つい世話焼きおばさんのような台詞を吐いてしまった。 「ありがとうございます」  女の子はようやく微かな笑顔を見せた。
/239ページ

最初のコメントを投稿しよう!

136人が本棚に入れています
本棚に追加