第五章 マシュマロの破壊力

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「わぁー、すごいお部屋」  来客用のスリッパを出し、部屋に招き入れると女の子は目を輝かせた。 「そういえば名前聞いてなかったね。私は萩野みさをといいます」 「澤井(さわい)由愛(ゆあ)です」 「ゆあちゃん、どういう字を書くの?」 「自由の由に愛って書きます」 「へー可愛い名前だね」  名前だけでなく、由愛は容姿もとても可愛かった。透き通るように白い肌、濁りのない大きな瞳、桜の花びらのような唇。美少女といっても人間だ。汗をかいたり、肌荒れしたりすることもあるはずだが、由愛にはそういう動物的な生々しさが一切感じられなかった。  白くて柔らかくて甘い物だけで出来ている、例えるならマシュマロのようだ。とても自分と同じ生き物とは思えなかった。  初対面で世代も違う二人には共通の話題がなく、しばし沈黙が流れた。  由愛にしたらストーカーに怯えている上に、知らない大人と二人きりなんて、そりゃ緊張するよね。  何か口に入れたら少しは緊張が解けるかもしれないと思って、冷蔵庫を覗いた。  すると、少し高級そうなプリンが目に入った。みさをは買った覚えがない、ということはキキのものだ。由愛はキキの友達なのだからあげても問題ないよね。  「プリン食べる?」と聞くと、由愛は「はい」と笑顔になった。
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