隠し鬼の石の話

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 雨続きの夏がそのまま秋に変わろうとしていた。畑のものはのきなみ根腐れを起こしている。田の稲も皆細く弱弱しい。新開地に移って六年、開墾し、道を通し、家を建て、納屋を建て、ようやく人がましい暮らしができるようになったと思ったところに、この天気だった。農民の暮らしとはそういうものだ。父はそう言った。その通りだと分かってはいるが、分かったところで気持ちが晴れるわけではなかった。  春に迎えたばかりの嫁が、朝、山でキノコを取ってくるといって出かけたきり帰ってこない。もう、昼飯どきはとうにすぎている。山のふもとには鬼隠しの森という場所がある。誤って入り込んだ者はそのまま姿を消し、ことによると何年も帰ってこない。母もある飢饉の冬、森に行ったきり帰ってこなかった。名前のとおり、鬼が住んでいる。鬼がさらっているのだと、誰もが信じている。嫁は遠方の出で、このあたりのことについては何も知らない。庄吉は落ち着かない気分で山を見た。巨大な獣がうずくまっているような、不気味な山容だった。深く息を吸って、吐いた。  土間の壁にたてかけてあった鉈をとった。弓をとり、矢筒を背負った。父に声をかける。 「わかっとるのか、鬼がいるんだぞ」  父がそう言う。黙って頷く。  庄吉は家を出た。鬼隠しの森へ向かい歩き出した。ぬかるみに、迷いのない足跡を刻みながら。  霧がたちこめる森の中を、鬼はゆっくりと歩いている。ときおり立ち止まって、あたりの臭いを嗅ぐ。水の匂い、土の匂い、木の匂い草の匂い、嗅ぎなれたいつもの匂いにまじって、人肉の匂いがする。女の肉だ。おそらく、まだ若い。それが、彼が住みかとしている洞穴に近づくにつれ、次第に強くなる。這うようにして身をかがめて洞穴の入り口をくぐると、女がいた。洞穴の奥、古い木造の観音像の足元に、大の字に横になって、いびきをかいていた。  十四とか十五とか、それくらいの歳だろうか。日頃人間を見慣れていないのでよくわからない。近隣の農民の娘だろう。たいして肉はついていない。傍らに背負い籠が転がっていて、その中にキノコや山菜が詰まっている。とりあえずは放っておいた。火をおこし、川で釣ってきた魚を焼きはじめた。女の鼻孔がぴくぴくと動く。 「魚!」  いきなり、そう叫んで起き上がった。  目を丸くして、火のそばの魚を凝視している。口の端から少し涎が垂れている。鬼の姿が、目に入っていないかのようだ。 「ああ――、うん」  長いこと声を発していなかったので、言いたいことが言葉にならなかったが、女はやっと鬼に目を向けた。 「うん? なんじゃ、お前は」 「鬼だ、見てわからんか」 「角がないのう」 「いや、とにかく鬼ということになっている」  彼の身の丈は八尺を越える。全身、濃い体毛に覆われ、ごつごつとした顔に目は緑色、髪は赤く天を突くように逆立っている。彼を見る者は皆、悲鳴をあげて逃げ出す。それが当たり前だった。 「で、私に何の用じゃ」 「いや、お前が俺のねぐらにおるのだ」 「ふむ。殺して食べたりはせんのか」 「よせ、怖いことを言うな」 「では、狙いは別のものか。鬼というわりに、腰のものは案外普通じゃのう」  彼の股間を見てにやにやと笑う。 「おう、赤うなった。なんともうぶな鬼よ」 「おまえ、ただの農民ではないな」 「かもしれん」 「まあよい、腹が減っておるのは分かる。好きなだけ魚を食ってよいから、気が済んだら出て行ってくれ」  女は礼も言わずに焼けた魚の串をつかんだ。うまそうにかぶりつきながら、 「鬼というて、なんじゃ、やはり鬼が島のようなところからやってきたのか? 親兄弟も鬼なのか?」と訊ね、「少し塩気がほしいのう」などと言う。 「塩などない」 「盗んだりはせんのか」  あたりまえのことのように、女はそう訊ねた。  幼いころの記憶が、ふとよみがえった。  自分がどこで産まれたかなど知らない。父の顔も母の顔も知らない。物心ついたころには唐人の見世物の一座にいた。世の中が乱れて、唐人たちが海の向こうに帰るとき、自分ひとりだけが置いていかれた。この国の言葉もよくわからないままだった。一人になってはじめて、自分が化け物で、この世に居場所のないことを思い知った。 「そんなときにお師匠に出会ってな。法華経の行者、坊さんだ。わしに言葉や、悪いことをせずに生きていく方法を教えてくれた。『念彼観音力』というてな、念仏も教えてくれた。唱えれば、観音さまがなんでも助けてくれると。 当人は、流行り病の年にあっさりと死んでしまったがな」 「そうか、あそこの観音さまはおまえのお師匠のものか」 「結局のところ、ただの木像だ。助けてはくれん。わしもこの森から出ては生きられん。鬼が島というのがあればそれはいいが、結局ただのおとぎ話であろうな。幼いころによく思ったのは、死んで地獄に行けば、俺と同じ者が、仲間の鬼が、たくさんいるのではないか、ということだ」 「地獄か」  女は魚を食い終わると、串を放り投げた。 「私は八つの歳に、米一斗で売られた。買い取ったのが、なかなか珍しい好みを持った男でな、私は八つの歳で女になった。間尺に合わぬとは思わんか。たった米一斗だぞ。まあ、一石でも小判をもらっても、あんな目にはあいとうないがな。十と二つになったころに、私は殺されることになった。主の目からすれば、女としての値打ちがもうなくなったということだったのだろう。人買いに売れば、行った先でどんな秘密が漏れるかわからん。だから殺す。いろんな女に、そういうことを繰り返してきたらしい。まあ、結局、私が殺されるまえに、屋敷が火事になって、主は死んだ。たまたま、な。十二の子供にできることなどたかが知れておる。私はそもそも疑われもしなかったよ。それからあちこち流れさすらって、嘘の身元をつくって、そこの村の庄吉という男の嫁になった。婿どのは何も知らん。あまりにきれいに騙されておるので、ときどき、いたたまれない気持ちになる――まあ、だから、鬼などというのはどこにでもいるのさ。主も鬼だし、私も鬼だ。人買いも私の親も。わざわざ死んでみるまでもない。里が地獄さ」  鬼は何か言ってやるべきだと思ったが、うまい言葉が浮かばなかった。お師匠ならなんと言っただろうか。考えたが、わからなかった。 「言うのを忘れておったが、森のこのあたりと外では、なんというか、時の流れ方が違う。半日過ごしたかと思って外に出てみると四、五日たっていたりな。はやく帰らんと、浦島太郎になってしまうぞ」 「なるほどな、それで鬼隠しの森などと言われておるのか」 「そういうことだ。ほら、起きろ。その婿殿とやらが心配していよう。森の出口まで送っていく」  女は背負い籠をかつぎ、鬼は女を肩に乗せて歩いた。森の中は霧が立ち込めている。周囲からは、滝のような雨音が響いている。森の中の霧も、仔細に見ればゆっくりと降っているのだ。時の流れの違いのせいで、そのようなことが起こる。 「大川の西に住んでいると」 「そうじゃ」 「あのあたりは一面の葦原ではなかったか」  山間を伝い降りた大川が平野に出て、北から南東へと流れを変える。西側は低地で、大川から分かれた細流が網の目のように流れて、その流れも年ごとに変わるから、到底田畑を作るには向かない。 「ああ、昔はそうであったようだな」  十年も前に侍が来て、たくさんの人足を使って、西側の土地を干拓した。大川の西には堤ができた。 「私が来るまえのことだ。詳しくはしらん」 「堤というのは、ああ、見えておるな、あまりしっかりした作りではな……」  鬼は渋面をつくった。もう、隠しの森の領域をだいぶ出てしまっていた。うかつだった。雨の匂いに紛れて、待ち受ける者の気配に気づかなかった。 「降りろ」 「どうした? 急に」  有無を言わせず、肩に座った女を地面におろした。藪の中から放たれた矢が、鬼の肩に突き立った。痛みはさほどない。ただ、痺れるような不快な感覚がひろがっていく。毒矢だ。 「たづ、今だ、こっちさ来い!」 「庄吉様、何を!」  二人の呼び交わす声が、がんがんと頭に響く。天地がぐるぐるとまわる。毒のせいだ。 「怖かっただろう、今からその化け物を退治してやる」 「この鬼は、殺されるようなことは何も……」  二人に背を向け、森に向かい、鬼は走った。いや、走るつもりだったが、手足がもつれて、まっすぐ歩くこともできなかった。二の矢、三の矢を射られればすべて食らっていたろう。あの女――たづというのか――が止めてくれている。  自分をかばうようなことをして、いじめられねばよいが。  それが、鬼の頭に浮かんだ、最後のことだった。 「無事でよかった、心配したぞ」  雨に濡れた、冷たい体に抱き寄せられた。興奮した庄吉の息だけが熱かった。 「……あいつは、なりがでかいだけの肝の小さいただの男だった……あんなことをすべきではなかった……」  攫われておびえ切った哀れな小娘の役を演じられれば、それで良かったはずだった。なぜだか、言ってもしかたのない、本当のことを伝えようとしていた。 「たづは知らんのだ。まだ川向うの村に住んでいたころ、俺の母も鬼にさらわれた。母は十年待っても帰ってこない。おまえもそうなるところだったんだぞ」  それは鬼が悪いわけではない。  そう思ったが、ここで庄吉を説得して、鬼を助けになど行けるわけがない。 「疲れました。家に、連れていってくれますか」  狙った以上に、力のない声が出た。 「よし、背負っていく。ほれ、おぶされ」  庄吉は彼女に背をむけてしゃがんだ。たづは身体をあずけ、首に腕をまわす。 「おまえが出て行ってから、五日だ。ほんとうに心配した」  たった半日ほどのことと思っていたが。  庄吉の言葉をうわの空で聞きながら、たづは鬼隠しの森を振り返った。倒れたのか、遠くまで逃げ去ったのか、鬼の背中は、もうどこにも見えなかった。  村へと戻る道の上を、なにか黒々とした塊が移動していた。分厚く垂れ込めた雲と豪雨のために光がとぼしく、それ以上のことは見定められない。近づいてみると、村人たちの群れであった。手に手に、鍬や鉈や鋤をたずさえている。 「庄吉、たづ、無事だったか」雨音が激しくて誰の声なのかわからない。 「おお、すまない、心配して来てくれたか」 「いや、心配はしていたがそうではない。川上の村のやつらが水門を開こうとしているのでな、皆でそれを止めにいくところなのだ。落ち着いたらでええから、おまえも来い」 「……皆で、そんな戦でもするような得物をもってか」 「おお、これは生きるか死ぬかじゃ。我らの戦じゃ」  黒々とした塊が、戦じゃ、戦じゃ、といくつもの口で叫び、いくつもの腕で、得物を振りかざす。庄吉はたずを背負ったまま道のわきに立ち尽くして、黒い塊が通り過ぎるのを待った。 ひどい泥濘の中を苦労して家まで歩いた。庄吉はたづを下ろし、炉に火を入れた。瓶から水を汲んでたづに飲ませ、 「今、芋粥を温めている。そうたくさんはないが、身体が温まる」そう言った。 「私は、大丈夫です」  板敷の床にきっちりと正座し、たづはけなげに微笑んでみせる。 「それよりも、村の人たちが言っていた、水門とは?」 「わしらは水門の前に土嚢を積んで、大川の水を堤のうちにとどめようと考えていた。川上の村の連中は、そんなもの間に合わぬから、水門を開いてできるかぎり水を流してしまえと言っている。放っておけば川の西の新開地すべてが水害を受けるだろうとな。水門を開いたとき、当然、水が逃げる先というのはわしら、川下の村だ。川上の奴らには痛くもかゆくもないことだがな、今それをやれば、田のものも畑のものもの残らず駄目になるだろう。悪ければ、堤そのものが切れてしまうこともある。わしらは土嚢を積みたい。奴らは水門を開きたい。それで、あのような争いになっておるのさ」 「よくわかりません。一番いいのは、どうすることなのでしょう」 「一番は、干拓などせず、葦原は葦原のままにして、先祖代々の土地に満足して暮らすことであったろうな。堤や水門をもっと賢く造作しておれば、少しはましであったかもしれん。だが、今はまず、争いを止めることだ。わしに何処までできるかわからんが、知らぬふりをすることもできん」 「それは、庄吉さまが背負わねばならぬことですか?」 「誰かが背負わねばならんことだ」 「ならば、私も一緒に参ります」 「女の仕事は生き延びることだ。庄屋の長兵衛どのの屋敷に土蔵があるのは知っていよう。女子供はあそこに逃げておる。芋粥を食ったら、たづもそこへ行け」 「庄吉さま!」 「死にはせん、戻ってくる」  あまり確信のないまま、庄吉はそう言って立ち上がった。   一時川面を赤く染めた血は、すぐに洗い流されて下流に消えていった。死体が一つ、浮き沈みしながら流されていく。どこの村の者ともわからない。  風が勢いを増している。雨が横殴りになり、水面が沸くように波立つ。言い争う声や、殴り合いの騒ぎを予期しながら走っていたが、結局そんなものには出会わなかった。庄吉が水門のありかにたどり着いた時には、何もかも終わっていた。二本の足で無事に立っている者は一人もいなかった。まだ息のある者を探し、傷の手当をした。その間にも、川の水かさは増していく。突風が吹くと、ざばざばと川の水が堤を越える。 「これではもう、手遅れではないか」  庄吉はそうつぶやいた。  ぐわ、と不意に山が吠えた。山の形が変わるのを、庄吉は確かに見た。  山津波が、押し寄せてきた。 どす黒いものが山の稜線を溶かしていく。木々が倒れ、森の緑が土の色に塗りつぶされ、あらゆるものが大川になだれ落ちていく。大川は沸き立ち膨れ上がる。岩塊や倒木が落ちるたびに、怪物の叫びめいた音をたてて水面が爆ぜる。倒木はぶつかり合いながら流れて、そこここで堤を破壊していく。川底に沈むはずの岩塊さえ、泥流に押し流されて川を転げ下ってくる。  逃げる間などない。土石流と競争して勝てる者などいない。庄吉は死を覚悟して目をつぶった。山津波は堤を軽々と乗り越え、川上の村を飲み込むだろう。田畑を覆いつくし、家々を押しつぶし、家畜も人も区別なく飲み込んで、十年近い人の労苦を最初からなかったもののように消し去り、すべてをもとの泥湿地にもどす――  激しい水音と、固いものがぶつかりあう音がした。庄吉は自分がまだ生きていることに気づき、目を開いた。  泥流の中に、人の姿があった。  いや、人のはずはない。人間にしては大きすぎる。とにかくその何かが両腕を広げ、川上に向かい立っている。流木を、岩を、その巨大な人影が押しとどめている。泥流自体はその両脇をすり抜け堤を乗り越えあふれ出しているが、激しい勢いは失っている。何より、堤防は破壊をまぬがれている。 「鬼か? あの化け物が、どうして……」  庄吉には知る由もないことだった。  がつん、がつん!  流木が、岩が、次々に流れ落ちてくる。そのたびに鬼の背中はぐらつくが、ひとつも漏らすことなく受け止めている。流木と流木が重なり合い、鬼の背丈よりも高い壁になる。崩れかかろうとするそれを押しとどめようと、鬼は上方に手を伸ばす。 「念彼観音力!」  鬼がそう叫ぶのを聞いて、庄吉は驚愕とともに涙を流した。  念彼観音力。  化け物などではなかった。あの者は、念仏を唱えている。 「ねんぴかんのんりき」  庄吉は鬼とともにその祈りの言葉を唱えた。 「ねんぴかんのんりき」  何度、何十度、その言葉を唱えただろう。いつしか、豪雨は過ぎ去っていた。暗雲を、風が掃き清めて、青空が少しずつ広がっていく。  山津波はもう、鎮まっていた。田畑の多くは泥流に覆われていたが、家々はどれも無事な姿をとどめていた。  そして鬼が立っていた場所には、人が両手をかかげた姿をした、巨大な石が残されていた。  これが、今に伝わる隠し鬼の岩の由来である。    ――しかしながら、伝説は伝説、人々が伝え残したいと思った話であって、事実はまた別にある。  大川のはるか下流、波の音がとどろく草原で、鬼は目をさました。流木や岩に立ち向かっているうちに、何かに頭を打って気を失った。よくは覚えていないが、そういうことだと思った。  たづの顔が、上から覗き込んでいた。 「わしはまだ生きておるのか、良い死に所だとおもったのだがの」 「世の中、なかなか気持ちの良いところでは死ねないものだ」 「なんだ? ここはどこだ?」 「よう知らぬ。まあ、海のそばじゃの」  たづはどこで調達したのか、竹筒に入った水と握り飯を差し出した。むさぼるようにそれを食べる鬼を見つめながら、 「よく村を救ってくれた。おまえのおかげで、どれほどの者が死なずにすんだかわからぬ」 「言わずともよい。おまえが毒消しをしてくれなかったら、わしはあのまま死んでおった」 「いやいや、たんと礼をせねばなるまいよ。私にできることはあまりないが……」 「よせ! なぜ服を脱ぐ!」 「冗談じゃ。おまえをからかうのは面白い」  鬼は渋い顔をして黙った。握り飯を平らげ、指先にのこった米粒を舐めとりながら、あらためて周囲を見渡した。一町ばかり下った先が浜だ。その先はみわたすかぎり海だ。 たづは庄吉が出て行ったあと、すぐに毒消しを持って隠し森へ走った。森の入り口ですぐに鬼を見つけられたのは幸運だった。時間の流れの違いが、鬼に回復する余裕を与えた。山津波の始まりを見てから大川まで走ることもできた。  村を守ろうというはっきりとした気持ちはなかった。たづが帰る場所をなくすのは可愛そうだと、その程度のことしか頭にはなかった。そしてやはり、死に場所が欲しかったのだ。 「さあ、帰ろうかの」  女が言う。 「ああ、婿殿のところにもどってやれ。心配していよう」 「まるでおまえは帰らんような口ぶりじゃの」  うむ、と言って鬼は立ち上がった。 「あの森で、死んで地獄に行くことばかり思って暮らすのも、飽きておったところだ」 「では、どうする?」 「さあの。鬼が島でも探そうか」  女は、からからと笑った。 「ならば、私も一緒に行こう……と言えればよいのだがな」  鬼はまた渋い顔になって、何か言おうとして、飲み込んで、結局こう言った。 「わしは、生きようと思う。おまえも生きろ」  そうして、女の言葉も待たず、すたすたと歩き出した。  女はしばらくその背中を見送っていたが、やがてきびすを返し、自分の居場所へと帰った。                           了                    
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