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空耳だったらどうしよう。もしかして私、酔って寝ちゃってる?
瞬時に色々な言葉が頭を巡る。
どうしよう。
でももし―――
「夢なら醒めちゃダメ……」
思わず口からこぼれた言葉に、頭の上からぶはっと笑う声がした。
「ひとの告白、夢オチにすんじゃねぇよ」
くくくくっと彼が笑う度に、背中に回る腕も上下する。
「あの…南雲?」
「うん?」
「本物?」
思わずそう訊ねると、南雲は一瞬固まってから、ぶはっとまた吹き出した。
「やっぱり最高だな、おまえ」
「褒めてないでしょ……」
「じゃあさ、試してみる?」
「え?」
「俺が夢か本物か―――」
(どういうこと?)
首を傾げたと同時に、街灯の光が翳った。
「っ、」
頬に温かなものが触れ、軽く音を立てて離れていく。
「な、な、な、……」
右頬に残る柔らかな感触。そこに手を当てて真っ赤になる私に、南雲は甘く囁いた。
「おまえ、最近、キレイになったよ―――俺のおかげだな」
「な、な、なんで?」
「恋をするとキレイになるんだろ? 」
(それってまさか―――)
私の気持ち、バレてたの?
疑問符が浮かび上がったと同時に、私の唇は温かな感触で塞がれた。
【了】
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