最近、キレイになった?

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「最近、キレイになった?」 お昼休みのパウダールーム。大きな鏡の前。 同期で友人の万由子(まゆこ)と鏡越しに目が合って、右手に持ったリップが宙で止まった。 「な、……なに言ってんの。そんなわけないじゃん」 「そうかなぁ……なんか近頃の奈菜(なな)、ツヤツヤしてない?肌荒れも吹き出物もないし」 「吹き出物って……」 いくら五年も前にティーンエイジャーを卒業したからって、『吹き出物』はあんまりじゃないか。 「せめて大人ニキビって言ってくれる?」 こちらも鏡越しに横目でにらむと、彼女は大きな口を開けて「あははっ」と笑った。 (美人さんは大口を開けてもキレイだなぁ) 同性でも見とれてしまうほどの美人な同期は、会社の顔を務めている。そのキレイな笑い顔を、ちょっと羨ましいな、と思って見ていた。 「ま、それはどっちでもいいんだけどね。ほんと最近あちこちで奈菜のこと耳にするのよ?」 「……悪口?」 自分が気付かないうちに何かやらかしたのかと、内心ドキッとしながら訊ねると、万由子はもう一度豪快に笑ってから「逆よ、逆!」と言った。 「うそ」 「嘘ついてどうすんのよ。つくんならもっと面白い嘘つくわ」 「面白い嘘って……」 「モテ期到来なんじゃない?奈菜」 「そんなことない。全然誰からもモテてないし。それこそ、受付けのマドンナに言われてもねぇ……」 じとっとした目つきで隣を見ると、隣から再び楽しそうに笑う声が聞こえてきた。
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