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「俺が聞いたところでなんも話してなんかくれないだろうしな……」
奏ちゃんがメガネをかけてきたのは2週間くらい前。
「コンタクトが合わなくて」と言っていたのも俺にじゃなくて、がーすーにだけど。
奏ちゃんは仕事では俺が直属の上司だから、いろいろと聞きにくるけど、それ以外の部分ではやたらと敬遠されてるらしく、まったくもって心を開いてくれない。
「指輪、しなくなったよな」
彼氏とのペアリングだという指輪をしてこなくなったから、彼氏となにかあったんだろうとは思った。
でも教えてもらえるはずもないから気にしないようにしていたけど、ずっと元気の無い様子が気になって仕方ない。
俺に心を開いてくれないからって、がーすーに何かあったか聞いてもらうのも嫌だし、本当なら俺が全て聞きたい。
「……ん?」
気にしても仕方ないとふるふると頭を振って、歩き出した俺の目に映ったのは奏ちゃんの後ろ姿。
さっきまで同じ会社で働いていた奏ちゃんだけど、いまの格好は会社で着ているような服ではなく、ラフな格好をしていて、メガネもかけていてコンビニの袋を手にしていた。
まるで家の近所のコンビニ帰りのような雰囲気だけど、がーすーの話では奏ちゃん家はこの辺じゃなかったはずだ。
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