27人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
【18:その勇者、エロい姿でハグする】
「さぁ、お遊びはこれで終わりにしましょうかねぇ……イッヒッヒ」
死神のヤツ、まるで攻撃をしてくるかのようなセリフを吐いてやがる。ホントは逃げる気満々のくせに。目が泳いでいるし、あの言葉はフェイクだな。
「そうだな。お遊びは、これで終わりにしよう!」
「イヒッ……?」
俺が急にそんな大声を出したものだから、死神は驚いて間抜けな声を上げた。
俺は精神を集中する。今までにない魔法の使い方。ケアルン・エクストラを、できるだけ狭い範囲、つまり刃物のように薄くして飛ばす。
──一発勝負だ。外すわけにはいかない。
俺は大きく息を吸って、気持ちを整えた。そして大声で詠唱する。
「ケアルン・エクストラ!」
「よしっ、いいぞアッシュ!」
ネーチャーは俺の手のひらから放たれた魔力に、加速を付けるように、死神に向けて剣を一閃した。
ギュンという剣の風音が鳴り響く!
俺の魔法はネーチャーの剣の加勢で、疾風の速度で飛び出す!
死神の姿は、盾にしたジョアンヌの身体のせいでまったく見えない。
そして俺の刃のようなケアルン・エクストラは、ジョアンヌの首に横向きに刺さった!
しかし回復魔法のため、もちろんジョアンヌにはなんのダメージもない。
「ぎょあああああぁぁぁぁ!」
死神の地の底から蠢くような叫び声が響く。ジョアンヌの足元に、ヤツの頭がゴロリと転がるのが見えた。
それに続いて、本体も崩れるように倒れる。そしてしばらくすると、身体も首も、黒い霧状になって、霧散した。
──よしっ、目論見どおりだ!
一般的にアンデッドモンスターに治癒系の魔法をかけるとダメージを与えることができる。
だからその治癒魔法を刃のように薄くしてヤツに浴びせると、その部分だけ大きなダメージを与えて、首と胴体を切り離したのだ。
「やった!! やったよ、ネーチャー!」
その時、急に身体中に力がみなぎるのを感じた。SSS《トリプルエス》難度の魔物を倒したことで、一気に俺のランクが上がったのがなんとなくわかる。
あれだけ難易度の高いヤツを倒したんだ。正確にはギルドで判定を受けないとわからないが、一気にSランクまで上がったんじゃないだろうか。
──そんな気がした。
「おおーっ! さすがだアッシュ!」
突然ネーチャーが俺に飛びついてきた。そして思いっきりハグしてくる。
──いや、あのう……あなたは今、上半身はブラ一枚なんですけど。
大きな胸の柔らかな感触が、俺の胸に伝わる。そして下はスパッツ姿。しかもパンツを穿いてない。そんな姿で抱きつかれたら……
「おい、アッシュ! どうしたっ!? 大丈夫か!?」
──頭が真っ白になって、ネーチャーの焦った声が遠くに聞こえた。
気がつくと、ネーチャーの顔がアップで見えた。
「うわっ……」
俺はどうやら洞窟の床に寝転がっていたようだ。慌てて立ち上がる。
「大丈夫か、アッシュ!?」
「あ……ああ、大丈夫だ」
「急に倒れてしまうなんて、私が気づかない間に、死神から何か攻撃を受けてたのかっ!?」
「いや、違う……」
「だったら、いったいどうしたのだ?」
お前はわかってないようだが……俺が受けたのはネーチャーからのセクシー攻撃だ。だけどそれをストレートに言うのは恥ずかしい。
「いや、単なる貧血だと思う」
「そうか……良かった……」
ネーチャーは綺麗な顔を歪めて、泣きそうになっている。本当に心配してくれてたみたいだ。
「ありがとうアッシュ。君のおかげで勝てたよ」
「えっ……? いや、ネーチャーは世界最強の勇者なんだから。俺なんかいなくても、勝てただろ」
「いや……このスパッツを履いたままで、あの人質を取られた状況だったら、私一人では無理だった。私の失敗をフォローしてくれたのはアッシュだ」
──コイツ……確かにヌけてるところだらけだけど……そんなふうに思ってくれてるんだ。
世界最強だけど、めっちゃ可愛いじゃないか。
最初のコメントを投稿しよう!