flavorsour 第三章

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軽く身支度を整え部屋を出た。まだ薄暗い時間帯のリビングは当然のように静まり返っていた。 (流石にこの時間じゃ……ね) 洗面所へ向かう途中、チラリと視線を這わせたのは彼の部屋のドア。 (この中にいるのよね……) 怒涛のように始まったよく知らない男性──榛名邦幸と暮らし始めてから三日目。土日を挟んで今日から平日のお勤めモードだ。 (そういえば何時に起きるとか聞いていなかったわ) 私はいつも6時に起き8時前に家を出ていた。しかし今日はやけに早い時間に目が覚めてしまい、なんとか6時になるまで寝ようと思ったのだけれど結局寝れずこうやって予定よりも随分早く起きてしまった。 (なんだろう……やっぱり緊張しているのかな) この歳になって初めて親元から離れひとりで暮らすことに対して──いや、違うか。ひとり暮らしではない。一緒に住む男性がいた。 (でもだからといって決して同棲ではなくあくまでも同居ですから!) 「……」 何処の誰に向かってムキになっているのか。それを可笑しく思いながら長い髪を束ねザカザカと顔を洗った。
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