flavorsour 第三章

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冷蔵庫を開け、調達していた材料でメニューを決める。 (あ、そういえば) ここでもまた問題が発生した。 (あの人、朝はご飯かしら。それともパン?) 私はいつも和食だった。しかし彼は果たして私と同じメニューでよかったのか。 (あーもう、こういう細かいところまで話していなかった) 彼との昨日のやり取りをぼんやりと反芻する。 話途中で彼の様子がおかしくなった。突然ぼんやりしたり言葉を濁したり──その原因が彼の育って来た家庭環境にあると知って正直戸惑ってしまった。 (家族団らんを知らない彼……) 詳しくは分からないけれどとりあえず今の段階で分かっているのは、彼が慣れないことをしてまでも蓮との繋がりを持ちたいということ。そこまでして蓮のことをと思うとやるせなくなる。 (私に取り入ったって彼には何のメリットもないのに) それと同時にこれから先、彼との暮らしで私自身どうなってしまうのか。そのことを考えると少しだけ憂鬱になる。 仮に私が彼を……彼のことを好ましく思っても蓮のことが好きな彼にとって私は恋愛対象にはなり得ないのだから。 ──好きになってはいけない人 始めからそう思って彼と暮らさなければいけないというのは中々にしんどい。
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