flavorsour 第三章

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何故か彼が黙ってしまったのをいいことにあれこれと考察していると── 「ぷっ」 「!」 「あ、はははははははっ」 「……」 (また笑い始めた) 彼と知り合ってからこういう風に突然の沈黙の後、笑い出すということが何度もあった。それがどういった意味を持つのかは未だに分からないけれど、彼の前で見栄や虚勢を張るのが馬鹿らしく思えてしまう。 同性愛者ならそもそも女性には興味がないだろう。従って私がどんなことをしようが振舞おうが彼にとってはなんでもないことなのだ。 (だったらもういっそのこと最初から晒してしまったら) ──どんなに楽なのだろう…… 「可愛いよ」 「え」 いつの間にか笑いが止まっていた彼の声が顔を伏せている私の耳に届いた。 「蘭ちゃん、スッピン可愛いね」 「っ!」 「元が可愛いから余計に化粧映えするんだね」 「~~~」 (な、な、な……なに言ってんのよ、この人!) 彼からの思わぬ言葉に顔中に熱が集まったのが分かる。そんな状態だから益々両手で覆った顔を晒すことが出来なくてしばしそのまま固まっていると「朝ご飯、俺も和食派だよ」と告げるとそのまま足音が遠ざかって行った。 部屋のドアが閉まった音が聞こえたからようやく顔から手を放すことが出来たのだけれど、まるで嵐に遭遇したような出来事にしばし唖然としてしまった。
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