flavorsour 第三章

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実家にいた時ならつけない食事中のテレビも今はBGM代わりにつけていないと間が持たない。 朝の定番情報番組を聞きながら黙々と食事する。視線は先刻からご飯、テレビ画面、ご飯、テレビ画面の繰り返しで決して向かい側に座っている彼には向かない。 しかし目の端にチラチラと映り込む彼の食事の所作に思わず見惚れそうになった。 (箸の持ち方、綺麗だなぁ……) 箸使いもそうだけれど物を口に入れた後の咀嚼の仕方とか好感が持てた。 私も幼少期から食事に関するマナーは厳しくされて来たから一通りのことは出来たけれど、それが出来ない人が多いのを社会人になってから痛感した。 (クチャラーは本当勘弁してほしいわ) 折角の美味しい食事を台無しにしてしまう行為を平気でする男性のなんと多かったことか。それだけでどんなに好条件の男性だったとしても一瞬で幻滅した。 その点でいったらこの人は満点の花丸をあげたい──なんて幼稚園の先生のようなことを思ってしまった。 「蘭ちゃん」 「! はいっ」 思わず心の中でほくそ笑んでいたところで急に話しかけられて驚いてしまった。
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