flavorsour 第三章

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「あ、急に話しかけてごめんね」 「い、いえ、大丈夫です」 「そう? あのね、俺、平日はいつもは7時頃に起きて8時に家を出るの」 「あ……はい」 (? 何、急に) 「知りたかったんだよね、俺の朝事情」 「朝事情って……」 (確かに食事の支度をした時にちょっと考えたけれど) 「こういう細かいこと話していなかったと思って。でもこれからは一時間早く起きるよ」 「どうしてですか」 「どうしてって、蘭ちゃんの作った朝ご飯、こうやって一緒にゆっくり食べたいから」 「……」 「ん?」 「いつもはどうしていたんですか」 「いつも? そうだな……時間に余裕がある時はパックご飯チンして納豆やふりかけで食べていたかな」 「余裕がない時は?」 「出勤途中コンビニに寄っておにぎり買って会社で食べる」 「……」 若い独身男性にありがちな朝事情で浅いため息が出た。 (一日の始めの食事を蔑ろにして……) これまた実家の両親に小さい時から叩き込まれた食の大切さ。それを疎かにしている人を目の前にして妙な使命感に駆られた。 「蘭ちゃん?」 「──分かりました。それでは同居にあたり決めたルールを追加します。朝は6時起床、7時に朝食開始です」 「はーい」 「……」 彼のやけに素直な返事の仕方に少し変な気持ちになった。
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