flavorsour 第三章

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(本当、よく分からない人) 「徐々に分かってくれればいいよ」 「!」 「はははっ」 「……」 またあの変な感じ。今、明らかに口に出していない私の心の言葉に対して彼は答えた。 (いやいや、こういうの何度目?) いちいち考えても結論が出ない堂々巡り案件。最早考えることすら馬鹿らしいと思ってしまっている。 (スルーだ、スルー) 私が必死に無心になろうと努めている間に彼はテーブルの上の食器を片付け始めた。 「食器、俺が洗っておくから蘭ちゃんは出勤準備して来なよ」 「いえ、いいです。私がやります」 「いいからいいから。出勤するまでに色々と準備があるんでしょ?」 「それは……まぁ」 「俺はないからさ。ここは俺に任せて」 「……じゃあ……お言葉に甘えて」 「うん」 「すみません」 「すみませんじゃなくてさー」 「……ありがとうございます」 「はい、任された」 「……」 にっこりと笑った彼の言葉に甘えて私はリビングを後にした。 (思わず任せてしまったけれど) 手伝いを率先してやってくれる姿勢はとても有難いし好感が持てるけれど…… (こういうやり方で私に取り入ろうとしているのかな) 先刻は分からなかった変な気持ちの原因の一端が見えた気がして、ついてはいけないと思いながらも深くため息をついてしまった。
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