flavorsour 第三章

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同じ時間帯に家を出る私と彼。支度を終えた私が部屋から出ると玄関に彼がいた。 「あ、支度、終わった?」 「終わりましたけれど」 「じゃあ行こうか」 「え」 「えって、もう出るんでしょ、家」 「出ますけれど」 「俺も出るからバス停まで一緒に行こうよ」 「でも榛名さんは電車でしたよね。バス停と駅は反対方向ですよ」 「いいのいいの。此処に引っ越して来てから前の家よりも通勤時間が短くなったからさ、その余裕分寄り道出来るの」 「……」 (そういえばこの人は蓮と同じ会社だから) 頭の中でザッと家から会社までの通勤経路と時間を計算した。確かに今から家を出ると彼の場合割と早い時間に会社に着くことになる。 でもだからといってそれが正反対のバス停に一緒に行くことに繋がるかというと── 「ひとりで行けますよ」 私は作り笑顔をしてやんわりと彼の誘いを断った。 「いやいや、危険だから」 「危険って何がですか」 「いつ何処で君を見初めてストーカーになる男が出るか分からないだろう?」 「そういうのは大丈夫です」 「何を根拠にそういうの」 「根拠も何も、今までそういうことに遭遇したことがないので」 「これからあるかもしれないでしょ」 「ないですよ、そんなの」 彼のこのしつこさは合コンの日にも経験したことがあった。
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