flavorsour 第三章

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そんな風に考え方を方向転換した私は彼の言葉を受け、最寄りのバス停まで一緒に行くことにした。 引っ越して来てから初めての出勤。先ずはバス停へと向かう。一応バス停までの道順は買物がてら散策した時に確認済みだ。 「蘭ちゃん!」 マンションを出て数歩行った処で彼が私の名前を呼んだ。 「何処に行くの? そっちじゃないよ」 「……」 最初の曲がり角を曲がった私の足がピタッと止まった。 「曲がるのはもうひとつ先の曲がり角だよ」 「……」 (え……そうだったかしら?) 私の記憶では最初の角を左に曲がるという認識だったのだけれど。 (あれぇ…?) 一瞬訳が分からなくなり呆けていると突然腕を取られた。 「!」 「ほら、行こう」 「あ……あのっ」 彼が私の腕を掴んでいると気が付いて思わず顔が熱くなった。 「蘭ちゃんってさ、方向音痴だよね」 「は?」 「なんかそう思った。危なっかしいから手、繋ぐよ」 「?!」 腕を掴んでいた彼の手が一度放れ、そしてダイレクトに私の手を握った。 (ちょ、ちょっとぉぉぉ──!) それはまるで小学一年生の新入生が上級生に手を繋がれて登校するような様相を呈していた。 「榛名さん、手は繋がなくても──」 「いやいや、危ないよ。不意に何処か行っちゃいそうで」 「そんな訳ないじゃないですか、私は大人ですし手なんか繋がなくても」 「──俺が嫌なの」 「え」 彼の手が一瞬、強く手を握った。 (今、俺が嫌って言った?) それはどういう意味なのか、私の発言を受けて出た答えとは結び付かないような言葉に首を傾げた。
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