flavorsour 第三章

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社屋の屋上は憩いの場として整備されていて昼の休憩時間だけ解放されていた。所々に花壇があって季節の花が植えられている。 その周りにいくつかベンチも配置されていて其処で花を愛でつつお弁当を食べるのが私の癒しになっていた。 「あ、伊志嶺さん。こんにちは」 「嶋さん、こんにちは」 私を見かけ声をかけてくれたのは庶務課の(しま)さん。彼は業務の合間に花壇の世話をしている人で此処で見かける度に挨拶を交わしていた。 「今から昼食ですか」 「えぇ。そういう嶋さんはお昼ご飯、食べないんですか」 「これを植えたら食べに行きます」 「いつも精が出ますね」 「好きでやっていますからね」 そう言いながら嶋さんは日焼けした顔でにっこりと笑う。 花壇の世話に関しては何処の部署が関わっているのか詳しく知らなかったのだけれど、こうやって嶋さんと出会って話すようになってからそれが庶務課の仕事だと知った。 (庶務課って別名なんでもやる課って言われていたわね) 別に馬鹿にした二つ名ではないけれど、噂では第一線を脱した定年間近の人たちが集まる課だと聞いたことがあった。そんな庶務課に在籍する嶋さんはとても定年間近の歳には見えない。 (そういえば嶋さんっていくつなのかしら) 見た目から想像するに40ちょっと過ぎたくらいか──なんて憶測で考えるのはよくないけれど、そういえばどうして嶋さんは庶務課なのだろうと考えてしまう。
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