flavorsour 第三章

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「僕は好きなんですよ、庶務課が」 「え」 「庶務課に異動になる前は営業にいたんですが、どうにも人と接することが苦手で……それなりの成績を出していたんですが気持ちよりも先に体が拒否反応を起こしてしまったんです」 「それって」 「胃をやられましてね。一か月ほど入院しました」 「……」 思っていた以上にハードな話を訊かされ更に申し訳ない気持ちになった。 「奇しくもそれで営業から人とあまり関わらない庶務課に配属されたという、何も面白くない理由ですよ」 「……すみませんでした」 「え、どうして謝るんですか」 「なんとなく……あまり話たくないだろうことを話させてしまったことに対して申し訳なかったと」 「あぁ、そんなこと気にしないでください。知っている人には周知の話ですから。寧ろ伊志嶺さんに話せてよかったと思っているくらいです。僕のことを少しでも知ってもらえたらと思っていましたから」 「……」 浅く日焼けした笑顔から覗く白い歯が眩しかった。 (これは……もしかして) それほど鈍くないだろう私は何となく嶋さんの気持ちを垣間見たような気がした。 (いやいや、なんだか話が変な方向に行きそうに──) なんて内心焦っているとランチボックスの中に入れてあった携帯がピンッ! と鳴った。 (グッドタイミング!) あまりにもよいタイミングで鳴った携帯に心の底から助かったと思った。
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