flavorsour 第三章

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勿論そういう恋愛が出来るなら誰でもいいという訳ではない。大抵は私の方がダメ──なのだ。いくら相手が私を好きで熱烈に愛してくれても…… (それは本当の私を好きということではないのだから) 猫被りの私はその分厚い被り物を脱ぐタイミングがつかめないでいる。その原因の一端は完璧過ぎる猫被り振りにあるのだろう。相手に疑問を抱かせないほどに見事ないい女を演じきってしまっているから。 そこから始まった恋愛は最初から嘘だらけの恋愛。だから私は罪悪感を覚え相手との温度差がどんどん開くことになるのだ。 (最初から素の私と恋愛してくれる人なんているのかな) 本当の私は恐らく万人受けしないだろうと分かっているから偽りの姿を脱却することが出来ない。自業自得とはいえ恐ろしいまでの負のスパイラルだ。 (もしかしたら……彼なら) 不意に(よぎ)る同居人の彼の顔。一緒に過ごす毎にさほど苦に感じなくなって来ている彼ならひょっとして──という希望が湧くこともあるけれど…… (ダメだ、私は最初から恋愛対象外だもの) 彼が私と同居する事情を知っていればこそ、彼に対してそういった感情を向けるのは避けなければいけない。 (はぁ……勿体ない) 色々考えながら食べたお弁当はよく味わえなくてなんだか損した気になった。 食べ終わったお弁当箱を仕舞っているとまた携帯がピンッ! と鳴った。
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