flavorsour 第一章

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楽しく飲んで食べて面白おかしくお喋りして、合コンというよりも単なる飲み会のようなノリだったけれどそれなりに有意義な時間を過ごすことが出来た。 「じゃあね」 「またねぇ」 「さようなら」 笹本さんたちとは反対方向の帰り道だったので駅前で別れた。 男性たちが「送って行くよ」とテンプレのように言ってくれたけれど電車に乗ったら自宅は駅からすぐなのでとやんわりと遠慮した。 (本当はバス通勤なのだけれど) あえて自宅を特定されないように用のない駅まで来てしまっていた。 「……はぁ」 駅構内のベンチに座って深くため息をついた。バス乗り場に行くには時間的にまだ早いのと、もしかしたら駅付近を笹本さんたちがうろついていたら厄介だと思っての時間稼ぎだった。 バッグから携帯を取り出し母にメールを送信した。 【今終わったので帰ります】 するとすぐに【いい出逢いはあった?】と返って来た。 (いい出逢い……か) 母には包み隠さず人数合わせの合コンに行くと連絡していた。父は私がそういう場に行くことを良しとしなかったけれど、父には母から上手く誤魔化してもらうことで多少帰宅時間が遅くなっても事なきを得ていた。 (大体門限があるというのもなぁ……) 25にもなって父から命じられた門限があった。勿論会社に関わる業務や行事などで遅くなる時はひと言連絡を入れれば決められた時間を過ぎても怒られなかった。
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