flavorsour 第三章

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慌てて携帯を取り出して確認すると私の後ろに並んでいる彼から【今晩、何食べる?】というメールだった。 此処に来るまでに彼には私に直接話しかけないでと釘を刺していた。何か用事がある時はメールでお願いしますといった言葉を守ってくれたようだ。 (晩ご飯か……どうしようかな) 頭の中であれこれ考える。今、食べたいものはなんだろうと嗜好に従順になっていると(んー……なんだかお肉って感じかな)と形を成して来た。 ハンバーグ、いや、唐揚げ……ポークソテー? 思いつく限りのお肉料理を浮かべて辿り着いたのは──とメールを打とうとした瞬間、先に彼から送られて来た内容にギョッとした。 【俺、今日は生姜焼きって気分。蘭ちゃんは?】 (な……な、な……) 何故か私が今まさに打とうとしていた【生姜焼き】が目に飛び込んで来て驚いた。 (偶然?! たまたま?!) なんだか同じものが食べたいというのは不思議な気持ちだった。 数多くあるご飯メニュー。しかも肉か魚の二択ですらない幅広いメニューの中で揃って生姜焼きが食べたいと思ったことに驚いた。 (なんだかなぁ……) ほんの少しこそばゆい気持ちを抱きながらも彼に返信した。 【私もそれがいいと思っていました】 悔しいけれどここで別のものがいいと反発するほど子どもではない。素直に私も食べたかったことを伝えた。
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