flavorsour 第三章

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自室で手早く部屋着に着替えてからキッチンへ向かうと、既に着替えた彼が買って来た食品を冷蔵庫に入れていた。 「手伝います」 手を洗いながらそう告げると「いいよ、蘭ちゃんはゆっくりテレビでも観ていて」なんて言われた。 「いえ、そういうの性に合わなくて」 「そういうのって?」 「男性が作業している横でボーッとしているということが」 「なんで? いいじゃん、ボーッとしていなよ」 「だからそういう性分ではなくて」 「……」 「? なんですか」 彼は私の顔をジッと見た。 (やだ、何か変なことを言ったかしら) 彼が何を言うのかと身構えていると徐に笑顔になった。そしてとんでもないことを口にした。 「そっか、蘭ちゃんは俺と新婚さんごっこをしたいと遠回しに言っているんだね」 「──は?」 「一緒に料理をするなんてシチュエーション、まさに新婚さんのそれだよね」 「~~~っ」 (な、何を言いだすの、この人は!) 『手伝う』と申し出たことからそこまでの発想が出来る彼がある意味凄いと思えてしまう。 「そっかそっかー。いや、嬉しいなぁ」 「違います! そういうことではなくて──」 「恥ずかしがらなくていいよ。そういうことなら蘭ちゃんのお願いは聞いてあげないとね」 「だから違うっていっています!」 ──結局それからの彼は暖簾に腕押し状態で、私が何を言ってものらりくらりと交わしてしまうので反論する気力を失ってしまったのだった
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