flavorsour 第三章

33/48

1787人が本棚に入れています
本棚に追加
/402ページ
そんな頭の痛いことがあった末に一緒に夕食作りをすることになった。そしてそこから私は彼にたくさん驚かされることになった。 「……凄い」 「ははは、もっと褒めて」 「凄いしか出て来ません」 「そっかー」 なんて言いながら彼は華麗な包丁捌きでキャベツを千切りにして行く。 「料理するって本当だったんですね」 「え、疑っていたの?」 「いえ、疑っていたという訳ではなく、ここまで出来ると思っていなかったというか」 「俺、叔母さんの家に引き取られてからずっと家事全般やっていたから」 「……」 彼のその言葉を訊いて思い出した。 (そういえば幼くしてご両親を亡くしたといっていたわね) 『実は俺……幼い頃に両親を亡くしていて親戚の家で育ったんだ。だから本当の意味での家族の団らんってよく分からなくて』 昨日彼が言っていたことを思い出して少し胸が痛んだ。詳しい事情は分からないし、安易に訊いていいことだと思わないからあえて訊きはしないけれど…… (きっと苦労したのね) そう思うだけに留めて彼の姿を横目に見ながら別の作業に取りかかった。
/402ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1787人が本棚に入れています
本棚に追加