flavorsour 第三章

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帰宅してから一時間とかからず私たちは夕食の席を囲んでいた。 「っ、美味しい」 彼特製の生姜焼きをひと口食べてすぐにそんな言葉が飛び出た。 「本当? よかったー」 「……」 (どうしよう……めちゃくちゃ美味しい) いつも食べる自分で作ったり家族が作ったりする生姜焼きとは少し違う味のような気がする。生姜焼きなんてほぼ味に差がないものだと思っていただけに素直に驚いた。 (なんで? 使っていた素材や調味料に特に違いなんてなかったのに) 彼の隣で手伝っていた私はそれとなく彼の作業工程を見ていたけれど、そこに不思議に思ったり気が付いたことなどはなかった。なのに今、食べている生姜焼きは初めて食べたような味がした。 (私が作ったものより美味しいなんて……) ほんの少し悔しい気持ちも湧いたけれど、それでもご飯が進むこの生姜焼きの美味しさにはただただ感動していた。 「美味しさの秘訣は愛情かなぁ」 「……は?」 「同じ材料を使っても違う味になるのは食べてもらう人のことを如何に好きかという愛情スパイスの濃さなんだよ」 「……はぁ」 彼が突然意味不明なことを言い始めた。 (え? もしかしてそれってこの生姜焼きの美味しさの秘密を語っているの?)
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