flavorsour 第三章

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どうしてこんなに美味しいのか、その秘密が知りたいとは思ったけれど特に口に出して訊いた訳ではない。 だけど私が発した『美味しい』のひと言だけで彼が美味しさの秘密を語ってくれた流れは分かる。──が、しかし 「自分で言うのもなんだけど俺の作る料理って食べさせる相手の好き度によってかなり味が変わるらしいんだよね」 「……」 「自分では気が付かないけどそういうのってあるみたいだよ」 「……」 (う~~~ん……何を言っているのか半分も分からない) いや、言わんとする意味はなんとなく分かる。美味しさの秘訣は愛情──なんてテンプレのようにいわれる言葉もあながち否定はしない。 だけど彼が私に対してその美味しさスパイスを発動したという意味が分からないのだ。 (私に対して愛情なんてこれっぽっちも持っていないくせに) 心の中で少しだけ捻くれてみた。 「──ふはっ」 「! な、なんですか」 「いや、何でもないよ」 「……」 (また含み笑いした) 一体それは何なのだと問い詰めたい気持ちが増幅する。しかしやっぱり先刻思った様に問い質したことによって彼のことを気にしていると思われるのは嫌だと思い、またもやその含み笑いに関することはスルーしたのだった。
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