flavorsour 第三章

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オタクというほど詳しくはないかもしれないけれど、とりあえずアプリゲームの金の帝国は今一番時間を割いて嗜んでいる趣味だ。 「蘭ちゃん?」 「──え……あ、あぁ……何となく知っている、ような……」 ボーッとしていて思わず焦って言葉に詰まってしまった。 「あ、知ってる? 有名だよね、テレビCMもやっているし」 「そ、そうです! CMで観たことがあります!」 「……」 「………あ」 (私ぃぃぃー、何めちゃくちゃ焦っている感じ出しているの!) 焦らなくてもいいところで焦ってしまい変なテンションで声高に答えてしまった。そんな私を彼はジッと見つめている。 (ちょ、見ないで! 今、私、最高に変な顔になっているから!) 自分で自分の顔が見えない今ほど恥ずかしいことはない。きっとそろそろ彼も勘付いて来ているのではないか? 私が見た目のままの中身ではないことに。 そんなことを思っていると彼は柔らかく微笑んだ。 「ねぇ、蘭ちゃんもやってみない?」 「──は?」 「金の帝国。面白いよ」 「……」 彼は私の挙動不審な仕草を言及することなくにこにこ笑いながら会話を続けた。 「一緒にやれたら嬉しいんだよなぁ。実はカップルクエストっていうのがあってさ、それめちゃくちゃレベル上げれるクエなんだけど──」 「……」 (馬鹿に、しないんだ) いつもと変わらない彼の態度に小さな安堵のため息を吐いた。
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